金融工学は何をしてきたのか / 今野 浩
まだ先の話とはいえ、自分が携わる業界について知りたくて、本屋を彷徨いながら手に取った本がコレ。文庫サイズで 200 ページ弱。暇つぶしになると考えて購入。著者の今野浩氏は、自身を日本の金融工学のパイオニアの一人と称しており、実際に大学で研究を行う職に従事していることからも、真実が書いてあることと期待して読みました。ほとんど知らない分野のことだけど、金融業界に就職したエンジニアの立ち位置から世界と日本の金融工学の歴史、経済学の中の金融論、そして金融工学がどういった目的に向かっているのか、著者の主義・思想・哲学に沿ってざっくりと大まかに知ることができたと思う。
金融工学は、一言で言えば資産をやりくりするための技術。ゆえに、自身の主義・思想・哲学に反する人から批判されることもしばしばとか。著者はリーマンショック・サブプライムローンを例に、危険な商品と知りつつ扱っていたエンジニアが悪くないとは言わないが、現場のエンジニアは従わざるを得ない部分が大きい的な言及をしている。仕方がないと、自分も思う。嫌なら就職しないか、被る被害に我慢できないならば抑制できる職を選択して人生を賭して抗議するしかない。そんな人生はちょっとね。
文中に登場するエンジニア倫理(下記参照)は面白かった。そんな人ばかりではないけれど、当てはまる人は結構いるな、と実感。でも、世界共通なのかな?
1.一流の専門家となり、仲間の尊敬を受けることを目指す。
2.多分野の専門家の仕事には軽々に口出ししない。
3.仲間(上司)から頼まれたことは断らない。他人にやってもらったことへの恩義を忘れない。
4.時間(納期)に遅れない。
5.仲間や学生をけなさない。
6.人の話は最後まで聞く。
リスク管理の限界にも触れている。文中では、デリバティブ商品の価格を決定することは、悩ましい問題だと書いてある。もちろん、困難は数式だとか計算手法ではない。困難は、資本市場が満たすべき条件で完備性と呼ばれている。文中では「市場に十分に多様な資産が存在して、他のいかなる金融商品の価格変動も、これらの組み合わせによって実現できる」条件とある。経済学は社会に大きく影響する学問だと思うけど、わかっていて利用するんだろうね。他に道はないけどね。
全体を通して、金融工学の雰囲気をさらっと読みたかった立場からは、面白楽しく有意義な本だった。

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